30:終焉

継続は力ナリ!(コロ助 談)



 翼を得たとはいえ、羽ばたき空を舞うことはなさそうだ。出来ないのか、するまでもないのか。まぁ、空中からバカでっかい光弾をガシガシ撃たれたら謝るしかないし、第一スカートはいてる娘がすることじゃないな。

 伊吹の双葉観察はそこで終わり。絵日記にしたとしても僅か1ページで終わってしまうお粗末な内容であろう。書き足すならば、中断した理由は首をはねられそうになったので慌てて屈み回避をしましたが、フォースナイトが頭上をかすめていくときの空気を切り裂く音が尋常ではなかったです、まる。と書いたに違いない。

 双葉は空振りに終わったフォースナイトを引き戻すことはせず、水平方向の力をさらに加速させると自身も一回転し、垂直方向へ軌道修正した二撃目で伊吹を真っ二つにしようと振り下ろす。激しい動きの後を懸命に追いかけるリボンの解けた長い金髪の間から見える、見慣れたはずの双葉の顔はやはり別人のようだった。
 生気を感じさせない瞳、意思や感情といったものが欠落した表情、それは彼女そっくりに作られた人形があるとすればきっとこんな感じになりそうな、命の感じられないもの。

「水槽で眠ってたときでも、もう少しマシな表情してたぜ」

 少しだけ悔しそうな表情を見せた伊吹は、右腕に憑依させた“牙”でフォースナイトを受け止めた。ガシィィンという衝撃音が戦闘ラウンドからインターバルへの合図のように、振り下ろした勢いで宙に浮いた体が重力に引かれ降りてくる双葉と、その姿を見つめる伊吹は動きを止め、近づくお互いの顔を見つめる。

「何で味方を襲ってるんだよ、このちびっこ」

 青い光に支配された瞳から視線をそらさず、柄にもない持てる演技力を総動員していつも通りの自然さを装ったつもりの伊吹であったが、比べるまでもなく日常度はゼロ判定が下されるトーンであった。
 今の双葉が自分の意思で行動しているのではないと明らかにわかる。かといって、シズナ達の力で操られているようなことはなさそうであるし、何がどうなっているのかさっぱり理解できない。ただ、手当たり次第に襲い掛かるなんて双葉が一番嫌うことじゃないか。
 そういう想いが複雑にブレンドされた結果がこの声である。その言葉を聞いて、無表情なままの双葉の眉がピクっと動く。

 伊吹の声は双葉の心へ届き、いずこかへ閉じ込められた意識を呼び戻す光の道しるべに……はならず、非常に全くもって残念ではあるが、再び戦闘ラウンドを告げるゴングとなったのであった。
 ガードされることで支えを得たフォースナイトを支点に空中で体をひねり、強烈な回し蹴りを顔面へ叩き込む。180センチ以上ある伊吹が130センチほどの双葉に吹き飛ばされるという光景はデッサンを間違った構図に映りかねない。
 しかし、同時に発生した派手な乾いた衝撃音のおかげで多少の信憑性は出るというところだろう。一番間違いでしたとなかったことにしたいのは、吹き飛んでいる伊吹なのは間違いないはずである。
 対照的に軽やかな着地を決めた双葉は、続けざまに地面を蹴り“獲物”と認識している生き物へ追撃をかけるべく軽やかに距離をつめていく。

 素早く立ち上がる伊吹。
 自らの身長以上のフォースナイトを軽やかに振るう双葉。
 今日、一度も出番のなかった惨劇の効果音が咆哮をあげる。

 ポタッ、ポタッ。

 具現化している青い光の刃を伝い、緑や茶色の地面に赤い血の色を加えていく。
 双葉の顔は、伊吹の手が届いてしまうほどに近くあった。
 二人とも動きはない。
 今の1秒が採用されるならば、1日は24時間でとても収まりきらないであろう長い一瞬。
 そして、彼の背中から突き出た光の刃。

 ペシっ。

 片目を閉じた伊吹の手が、本当に軽く双葉の頬を打つ。

「目……さめたか? 今のお前、ちっともかわいくないぞ」

 ドクン……

 伊吹が力なく倒れこむのと、双葉が悲鳴を力いっぱいあげるのとは、同時だった。

テーマ : 自作小説(ファンタジー) - ジャンル : 小説・文学
この記事へのコメント
お久し振りです。
やっとここまで読むことが出来ました(>_<;)
あまり来れなくてすみません。。

相変わらず面白いですね。兎和さんの文章表現好きです。
この回もシリアスな戦いなのに、コミカルな文章でとても面白く読まさせて頂きました☆
玖堂 匡介 | URL | 2008/05/24/Sat 11:08 [EDIT]
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