18:岐路

ワクワクさせる、楽しませる、感激させる。
とにかく、何かを伝えられるということは素晴らしいことだと思うし、そういう域に達したいと強く願う。

れす
16:30のお方
結構折れそうなときって多いのですよ!
多方面から本当に励みになってマス!



 放り投げられた人形が地面に落ちる、そんな表現がピッタリであろう受身を全く取れずに背中から落ちるウィステリア。

 私はバカだ! みんな……私のせいで命を失い、傷ついていく。何がゴメンねよ……。リースとコーエンをこんな呪縛から解放するのは、私がやらなきゃいけないこと。それこそが彼らの望むことであって、魂に安息をあたえることなのに。
 ウィス、情けないリスドールが最後に見た姿なんて絶対に許さないよ!

 脚の上に乗りかかっているコーエンの喉元に肘を打ちつけ自由を得ると、そのまま後方へ倒れ掛かるようにして地面に手を付き、脚の伸びた綺麗な一回転を見せて立ち上がる。そして両手をコートの下へ素早く差し込むと、腿に付けたホルダーから投げナイフのような小振りの短刀を四本の指の間に挟んで引き抜き、元部下との視線に割り込ませるよう顔の前で構えた。シルバーのナイフが刃の部分を月の光で青く輝かせ、流れる空気さえも凍てつく氷の殺気が一気に周囲を支配する。

「さようなら……愚痴は後でたっぷり聞くから、少しだけ先に逝った皆とバカ騒ぎして待ってておくれ」

 目を閉じ、彼女なりの別れの言葉を悲しみの色に染まった声で囁き終わると、ナイフを持つ手にぎゅっと力を込めた。彼らを見るその茶色の瞳には先ほどまでの迷いの曇りはなく、瞼が開ききると同時にリスドールの姿がふっと消える。いや、実際にはそう見えただけであるが、多くの標的となった者たちはそう感じ、この世に別れを告げた。
 コーエンのすぐ目の前で円を描くように舞うリスドール。命が終わった今もなお動き続ける体を切り裂く鋭い三本の光が印された直後、静かに灰となって崩れ落ちてゆく。その体が完全に灰となる頃には、同じようにリースにも魂の解放を告げる同じ印が刻まれていた。
 そのまま地面を大きく蹴り疾風のように突き進む先には、彼女の大切な者をことごとく傷つけたヴァンパイア、相打ちであろうとその命をもって償わせると誓った標的レクラムがいる。

「お前の行き場所は何処にもない! 許しを乞う必要もない! 此処で消え去ってゆけ!」
「脇役は脇役らしく、舞台の隅で演じていれば死なずに済むものをバカがぁ」

 突き刺さる視線を放つ茶色の瞳を、あざ笑う赤い瞳。
 直撃したにも関わらず無意識に纏う守護障壁の効果で切断されることはなかったウィステリアとは違い、魔力を持たぬリスドールならば飛ばされた腕の苛立ちを少しは解消させてくれる愉快な光景を見せてくれるだろうと、切り裂く場所と姿を思い描き爪に赤い光を灯す。リスドールの動きは速かったが、捕らえきれないほどではない。
 その動きから回避不能と思える間合いに踏み込んだとき、五本の牙が獲物を待ちきれぬように地面を削りつつ唸りをあげた。
 全ては予定通り。
 赤い半月形の牙はリスドールに命中し、さらに満足しないのか遥か後方へと更なる獲物を求め疾走していく。
 それもそのはず、空腹が満たされるはずはないのだから。命中はした、だが何者をも切り裂いてはいない。すり抜けたといったほうが正しいであろう。
 何が起こったのか理解できないレクラムを突然の激痛が襲い、その原因が左胸に突き立てられた三本のナイフによるものだと認識できたとき連鎖的に謎は解けた。
 リスドールはすぐ目の前にいたのである。

「ウィスを切った慢心かい? 相手が私だからって油断したね。皆楽しく騒いでるところさ、お前の悲鳴は何処にだって届かせないよ!」
「がぁぁぁぁぁぁぁ」

 殴るようにナイフを押し込まれると、力なく後ろへふらふらとよろけるレクラム。ぼさぼさに乱れた茶色の前髪が目を覆い、地面には彼の瞳と同じ色の水溜りができていた。

「目を……見たときだなぁ。幻術か……ふふふっ……ははははっ」

 負っている傷とは不釣合いな表情でリスドールを見ると、目を細めカラクリはそうなんだろう? と促しているようであった。彼女自身、これは特技のようなものとして捉えており、滅多に使うこともないため知る者はほとんどおらず過去にも実戦で使用したことは一度もなかった。その内の一人であるクロセルは「狐耳に合ってていい」などという素直に喜べない感想を述べている。

「まぁ友を愚弄する汚れたモノの掃除はできたし、処刑師様は後日ゆぅーーーっくりと刻んでやる」

 そう言うレクラムの姿は瞬く間に闇に溶けるように霞んでゆき、突き刺さっていたはずのナイフがカシャンという重なり合う音をたて地面へ落ちた。霧となっていく姿にナイフを軽く投げてかき消し、もはや原型をとどめていないそれに向かっていつものリスドールからは想像できない冷たい声で返す。

「刻むのは私だよ。英霊に永久の安息を与えるために、全てのものに逆らおうと復讐の女神だけは私と共にある。その誓いの刃を振るえるなら、魂だって喜んで捧げてやるさ」

 今夜の舞台の終わりを告げる雲が淡い月の照明をそっと隠し、闇が暗い幕を下ろした。しかしこれは、長い悲劇の序章にすぎなかったのかもしれない。


駄文だなぁと痛感している兎和に活を

テーマ : 自作小説(ファンタジー) - ジャンル : 小説・文学
この記事へのコメント
普段とのギャップというか、リスドールの台詞もかっこいいです!
いき♂ | URL | 2008/03/01/Sat 23:40 [EDIT]
セリフって一番ニガテなんですよ!
登場人物全員で、座談会。
それも誰の発言かは隠したセリフのみってのをやったら、カオスになりそうだ。
うははー。
兎和 | URL | 2008/03/03/Mon 06:13 [EDIT]
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