8:角度

やっと固形物が食べられるようになってきた感じの兎和デス。
お気遣いくださったミナサマ、ありがとうございますー。

やたらと短めになってしまいましたが、更新が滞ってしまっているのであっぷー。
見直したりないかもっ。



 僅か数十分間で荒廃度を大きく上げたフロアは、嵐の前の静けさならぬ嵐の後の静けさといった様子だった。

「それで、よ。そこのイチャイチャ看護中な二人を、もしよかったらお送りしようかと思うんだけど、邪魔しちゃ悪いかねぇ?」

 リスドールは膝枕をしている双葉の方へそう言いながら近づき、足元に転がっていた握り拳二つ分くらいの瓦礫を少し大げさにピョンっと跳び越えると、双葉の正面、つまり伊吹の真横へ着地する。その顔の表情は、からかってみたら面白そうだという期待感に満ち溢れ、ややたれ目な姉御顔にオプションで悪巧みが追加されていた。

「イチャイチャじゃなくてっ! 床にほらっ、ゴロっと転がしておくのも見栄えが悪いのだ」

 顔を真っ赤にし、両手の妙なジェスチャーを加えてあたふたと反論するが、リスドールはニヤニヤとしながら聞き流す。

「それに、そろそろ歩けるくらいには回復してるんじゃない? 鋭い視線の伊吹くんは」
「いっ」
「あっ」

 双葉に背を向けた姿勢なので、視線がどこへ向けられているか確認は出来ないが、伊吹の位置からだとミニスカートなリスドールはギリギリな角度であることは間違いなかった。

「いや違うっ! 確かにギリギリだし、だから起きるタイミングを逃したなーって困ってて、ほら、結局見えてないわけだし、あーそうじゃない」
「ふぅぅぅぅん」

 滝のように汗をかきながら意味不明なことを噛み噛みで必死に喋りつつも、とんでもない威圧感に押され振り向くことができないでいる伊吹であったが、冷静さを装ってそう答えた双葉は闇に青い瞳だけがキラリと光る、さながら暗黒界の住人の様相を呈していた。バサバサと羽ばたくコウモリや、墓場のシルエットが似合いそうなあれである。

「へぶっ、むすっ」

 短く妙なうめき声が二つ。
 まず膝枕を急に抜かれての後頭部強打によるもの、そしてもう一つは右手でチョキを作り、尖った爪での目つぶしによるものである。ゴロゴロと床を転げまわる伊吹を尻目に双葉は、自分の服をパタパタとはらいながら立ち上がり、リスドールとウィステリアを交互にまじまじと眺める。
 ウィステリアは双葉より数センチ背が高いといった感じであったが、トコトコとこちらに無表情で近づいてくる様子は何だかからくり人形を連想させた。そしてリスドールは同性であっても目がいってしまう大きな胸や謎の狐耳は置いておくとして、からかった後のケラケラという笑いはまさに姉御っぽさを存分に表現している。
 二人とも悪い人ではなさそうであるし、先ほどの会話の中からある程度は把握できてはいたが、やはり直接はっきりとさせておきたい。それに聞きたいこともある。さらに今になってお気に入りの服がズタボロにされたことにイライラが募る、そんな双葉であった。

「あの!」
「まぁまぁ、とりあえず車で送るからイロイロは話はその中でね。出たトコに止めてあるから、さぁ乗った乗った」

 まるで子供でもあしらうかのように、双葉とウィステリアをセットにしてぽふぽふと入り口の方へ押し出すと、チラッと後ろを振り返り、伊吹の姿を見てクスっと笑うリスドール。

「急がないと置いてくよぉー」

 言い終わるころには、既に彼女たちの姿はもう見えなくしまってはいたが。


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テーマ : 自作小説(ファンタジー) - ジャンル : 小説・文学
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