6:真価

あ、1日1タイトル計画忘れてた。

そしていつも思う。絵が描けるお方って本当に尊敬するなぁ。



 彼人は冷徹なイメージとは似つかわしくない大声で叫ぶ。その顔は笑っていた、とても楽しそうに。
 いや、二人が最初に感じたのは全てが間違っていた訳ではない。そう、残酷や冷血といった言葉が当てはまる、正にそんな確信を抱かせる表情であった。
 そして大声は自分への鼓舞であるかのように双葉の返答を待つこともなく、鋭い連撃を次々に双葉に浴びせる。何とか後ろに飛び退きつつ防ぐのであったが懸命に張る防御壁はいとも簡単に切り裂かれ、空中にいくつもの青い光の破片を作り出していた。
 彼人は接近しての戦闘を得意としているのだろう、その動きは相当な熟練さを見せ、剣さばきも流れるような太刀筋である。一方双葉は本来、魔力による中・遠距離の攻撃を得意としており、あまり格闘やその類のものはどちらかというと苦手なほうだった。
 もっとも、得意だとかそんなレベルで彼人と互角にわたりあえるとは思えないのであったが。

「くだらん、実にくだらん。ルクレイツはその魂と共に、強大な力までも持って旅立ったとみえる。消滅した後も名を受け継がれ、どんな辱めを受けようと俺は知ったことではない。むしろヴァンパイアには当然の報いだ。お前には失望したが、この世にしがみつくその哀れな残骸を討ち滅ぼすことで我慢するとしよう」

 呼吸を少しも乱さず、斬った後の光景を想像しているのであろうか、冷たい笑みと共に血のような瞳で双葉を睨みつける。辛うじて魔方陣による防御壁で直撃は免れているものの、この場所までしっかりと雨を防いでくれた合羽はズタズタになり、重圧のせいか顔には汗が流れていたが戦意は失われることなく、双葉はより勝気に見えるそのつり目で睨み返していた。

「私だってお前が失望しようが妥協しようが、そんなこと関係ないのだ。仲間なのに伊吹を傷つけた、それだけは絶対に許せない」

 もう本来の役目を果たせそうになくなってしまった合羽を脱ぎ捨てながら言う。ここに来る際に購入したその合羽は希望する色がことごとく品切れであったので、仕方なく真っ赤という派手な色を選んだのであったが、幸か不幸かその派手さに悩まされることももうないであろう。
 そして交代で登場したお気に入りのゴスロリ服も所々破れてしまって、製作者が意図したデザインからは大きく形を変えていた。

「ふんっ、仲間? 同じ組織、同じ敵がいるというだけで仲間だとは思わん。それに私からすれば、お前等も敵だ。ヴァンパイア、それに類するものは全て神の敵! 一体残らずこの世界から消滅させるのが私の使命! ヴァンパイアごときが私の楽しみを奪うなど、絶対に許せん。お前等は私を楽しませてくれればそれでいい」
「お前には楽しみかもしれないけど、私たちにとっては……」

 悔しそうに歯を噛みしめる双葉。口元からは牙が姿を覗かせている。
 そして決意したように、腰に付けていた三つ折りの黒い杖のようなものを手に取り目の前にかざした。光沢のあるその杖は双葉の魔力に呼応するかのように真っ直ぐになり、さらに伸びた長さは軽く双葉の伸長を超える。大きく横に突き出た先端部分からは青い光の刃が形成され、全体像はまさしく“鎌”そのものであった。
 これが“冥府の裁断”たるルクレイツに死神のイメージを持たせ、そう呼ばせた所以の一つである。

「おぉ、少し形は違うが正しくフォースナイト! いいぞ、いいぞ。全力でこい、出し惜しみをしていて、その首が体から離れた後で後悔してもしらんぞ」

 笑い声と共に再び疾風のごとく斬りかかる彼人。その斬撃を後ろに下がりつつ鎌“フォースナイト”で受け、さばききれない攻撃は魔方陣による防御壁で防ぐ。先ほどまでと同じ防戦一方のように見えたが、フォースナイトの光の刃は切断や貫通されることなく漆黒の剣を受け止め、双葉の体が危機に陥る場面が格段に減っていた。
 だが双葉の傷が増えていくことは変わらず、攻勢に出ることは全くといっていいほどない。フロアにあった崩れた壁や放置されていた設置物は、少し丸みを帯びた自然な風化具合から直線的な姿へ次々と変わっていく。

 そんな時、一瞬、本当に僅かだったが、視界に入ってきた伊吹に視線をやる彼人。意識を失っているのか、体はぐったりとなり剣のせいで倒れることも出来ずにいた。双葉にはその一瞬で十分だった。直前の攻撃をフォースナイトで受けたこと、その後の一瞬の隙。素早く右手を彼人の胸元へ突き出し、青く輝く魔方陣を形成すると数発の光弾が尾を引き撃ち出される。
 しかし、至近距離からのこの攻撃でさえ、漆黒の剣によって弾かれてしまう。キィンという魔法と剣がぶつかる独特な音が、フロアに響き渡る。
 無駄なことを、とばかりに相変わらず笑みを浮かべている彼人が次に見た光景は……
 双葉の戦意を失った姿でも逃げ惑う姿でもなく、振り下ろされるフォースナイト。

(光弾をかわせたとしても、剣で防御すると思った。有利すぎて僅かに油断してるから)

 そう心の中でつぶやきながら、渾身の力を込めて振り下ろす。
 しかしこの攻撃も、驚異的な反応速度による彼人の剣によって防がれた。いや、防がれたはずであった。彼人の剣は確かにフォースナイトの光の刃を受け止める位置にあった。だがフォースナイトは彼人の剣をすり抜け、左肩から斜めに体を切り裂いたのである。
 寸前で飛び退き致命傷は免れたものの、彼人自身がとった行動ではなく、直感で危険を察知した体が無意識で動いたのであり、そのままの位置であれば体は無残にも二つに別れていたところであろう。

「はははははははっ!!」

 おびただしい鮮血を流す姿とは不釣合いと思える大きな笑い声をあげ、赤い瞳を輝かせてゆっくりと剣を構える。長い金髪が肩口の傷に触れ、所々血の色に染まっていた。

「こんなの、何か違う。こんなことするために、私はいるんじゃない」

 朱に染まる彼人の姿を見て、双葉がつぶやいた。伊吹にしたことへの怒り、自分自身でさえ迷い、苦しみ、求めている存在価値の罵倒、人の命を奪いそうになっている現実、様々なことが頭をよぎり、感情を揺さぶる。
 迫り来る彼人を見てはいたが、夢の世界のように感じられ体を動かすことができなかった。漆黒の聖なる剣が双葉の体に届こうとするその刹那、ピシィンというガラスが砕けるような音と共に彼人の剣は、透明で僅かに紫色を帯びた薄いガラスのカードによって止められ、砕け散ったカードはキラキラと紫の光を幻想的に放ちながら消えていく。

「はい、そこでおしまい。彼人も今回は見逃してあげるから、早く消えるといいわよ」

 声がした入り口には、その主であろう22〜3歳くらいの女性が、長い髪の毛先を指でくるくると遊びながらややたれ目な瞳でこちらを見つめていた。キャミソールの上にロングコートを羽織ったその姿は少々寒そうに見えるが、それより目を引くのは茶色の髪の間から覗く、時折プルンと動いている狐耳であった。
 そしてその隣には、外見は双葉と同じ年齢くらいに見える無表情なメイド服を着た少女。銀色のサラサラとした髪を控えめに肩口で二つに束ねた髪型、赤い瞳とその表情に合った小さい泣きぼくろは、まるで魂のない人形のような印象を与える。


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テーマ : 自作小説(ファンタジー) - ジャンル : 小説・文学
この記事へのコメント
追いつきましたw
拍手と応援ぽちしましたっ。
やー、新キャラ出たところで終わると、続きがより一層気になりますねぇ!

えと、私のブログにリンク張っちゃいます。
ご迷惑だったら外しますので。
いき♂ | URL | 2008/02/04/Mon 18:16 [EDIT]
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| | 2008/02/04/Mon 19:21 [EDIT]
応援ありがとうございますー。
キャラを愛してやまないので、大量に出したくなるのですよっ。

リンクありがとうございます♪
貼るもはがすもお気のめすままにっ!
兎和 | URL | 2008/02/04/Mon 22:25 [EDIT]
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